百貨店の店舗数は26年で43%減――売上の回復と「近くで買える場所」の減少
全国の百貨店の調査対象店舗数は、1999年の311店から2025年末の176店へ、135店、約43%減りました。同じ期間に年間売上高も約8.99兆円から約5.68兆円へ減少しています。
ただし、近年の売上は下がり続けているわけではありません。2021年から2024年には増加し、2025年に再び減少しました。売上が持ち直すことと、身近な百貨店が残ることは別の問題です。
この記事で分かることは、次の3点です。
- 店舗数と売上高は、1990年代からどれだけ減ったのか。
- 最近の売上回復は、どの地域に集中しているのか。
- 全国の売上だけでは見えない、買い物の利便性の変化をどう読むか。
使用データは全国の百貨店統計、年間比較は2025年まで
長期推移は、日本百貨店協会の統計を中心に、全国の店舗数と暦年売上高を比較します。
過去の数値には、経済産業省が公開する審議会資料に掲載された百貨店業界の推移表を使用しました。近年は協会の年間売上表と月次概況を使います。経済産業省公開の百貨店業界資料
比較条件は次のとおりです。
- 対象地域: 日本全国。地域比較では協会の「10都市」と「10都市以外」を使用。
- 対象期間: 長期比較は1990~2025年の代表年。直近の動きは2026年8月。
- 売上高: 1~12月の暦年合計。物価調整をしていない名目額。
- 店舗数: 過去資料の年別店舗数と、近年の12月の調査対象店舗数。2026年は8月の月末値。
2026年10月8日時点で、協会の最新月次公表は2026年8月分です。2026年9月25日に更新されています。一方、年間売上高の最新の完結した年は2025年で、公表資料は2026年1月23日更新です。2026年の公表一覧、2025年の公表一覧
ここでいう店舗数は、協会統計の調査対象です。全国に存在する商業施設をすべて数えた値ではなく、店舗数の差をそのまま閉店件数と呼ぶこともできません。
店舗数は約43%減、同じ期間の売上高は約37%減
1999年と2025年をそろえて比べると、売上高以上に店舗数が縮小しています。
| 年 | 店舗数 | 年間売上高 |
|---|---|---|
| 1990年 | 260店 | 9兆3,302億円 |
| 1999年 | 311店 | 8兆9,936億円 |
| 2010年 | 261店 | 6兆2,921億円 |
| 2014年 | 240店 | 6兆2,125億円 |
| 2025年 | 176店 | 約5兆6,755億円 |
出典は、過去分が経済産業省公開資料、2025年が日本百貨店協会の年間売上表と12月概況です。売上は億円単位に丸めています。店舗数は上記の比較条件に従います。
1999年から2025年の変化を計算すると、次のようになります。
- 店舗数:311店から176店へ、43.4%減。
- 年間売上高:約8.99兆円から約5.68兆円へ、36.9%減。
- 売上高の減少額:約3.32兆円。
これらは、各年の総額と店舗数から計算した値です。協会が公表する「店舗数調整後」の前年比とは異なります。
売上が弱くなっても、すぐに店舗が減るわけではない
1990年から1999年には、店舗数が260店から311店へ増えた一方、売上高は約9.33兆円から約8.99兆円へ減っています。
店が増えれば、業界全体の売上も増えるとは限らない。この時期の数字は、その違いを示しています。店舗網の拡大と販売額の変化には時間差があり、現在の売上だけを見て、将来の出店や閉店を判断するのは難しいのです。
1店当たりの売上増は「どの店も好調」を意味しない
年間売上高を店舗数で単純に割ると、1999年は約289億円、2025年は約322億円です。計算上、1店当たりの売上は約11.5%増えています。
しかし、これは同じ店舗を追跡した比較ではありません。小規模な店が調査対象から減れば、残る店の売上が変わらなくても平均は上がります。店舗の大きさや地域構成が変わった可能性もあります。
さらに、年間売上という「1年間の合計」を年末の店舗数で割っているため、年の途中で営業を終えた店の影響も含みます。この平均は業界の規模感を示す目安であり、典型的な1店舗の売上や中央値ではありません。
最近の売上は回復したが、2025年には増加が止まった
近年の動きは、長期縮小の中で売上が持ち直し、その後に足踏みしたと読むのが適切です。
協会の地域別売上高の推移表による暦年売上は、次のとおりです。
- 2021年:約4.42兆円。
- 2022年:約4.98兆円。
- 2023年:約5.42兆円。
- 2024年:約5.77兆円。
- 2025年:約5.68兆円。
2021年から2024年には総額が約30.6%増加しました。その後、2025年は2024年を約968億円、1.7%下回っています。これは調整前の総額同士の比較です。
ここで注意したいのは、回復の出発点が2021年であることです。比較する年を変えると印象も変わります。2025年の約5.68兆円は2021年より大きくても、1999年の約8.99兆円には届きません。
また、売上高は価格と販売量の両方で動きます。商品価格が上がった場合や、高額商品の割合が増えた場合には、買った人数や商品数が増えなくても売上は伸びます。「売上が戻った」から「利用者が以前と同じように戻った」へ、読み替えることはできません。
売上回復は全国一様ではなく、10都市への集中が進んだ
全国の持ち直しを地域に分けると、10都市とそれ以外の差が見えてきます。
協会の区分では、10都市は札幌、仙台、東京、横浜、名古屋、京都、大阪、神戸、広島、福岡です。都道府県別の比較ではなく、都市として集計する区域と、それ以外の地区を分けています。日本百貨店協会の地区区分
2021年と2025年の売上を比べると、次の違いがあります。
| 区分 | 2021年 | 2025年 | 総額の変化 |
|---|---|---|---|
| 10都市 | 約3.15兆円 | 約4.43兆円 | 約40.8%増 |
| 10都市以外 | 約1.27兆円 | 約1.24兆円 | 約2.2%減 |
出典は協会の地域別売上高の推移表。増減率は掲載された総額から計算した調整前の値です。
この期間に、10都市の全国売上に占める割合は約71.3%から78.1%へ上昇しました。全国の売上回復が、どの地域でも同じように起きたわけではありません。
ただし、2023年2月から北海道の1店舗を札幌に合算する地区区分の変更があります。上表は公表値をそのまま比較したもので、この変更を補正していません。店舗の増減も含むため、同じ店の売上成長率を表す値ではない点にも注意が必要です。
売上が集まる場所と、店舗がある場所は一致しない
2025年12月時点では、10都市に71店、10都市以外に105店あります。10都市の店舗数は全国の約40%ですが、年間売上の約78%を占めています。2025年12月の店舗面積・店舗数表
都市の大型店と、それ以外の店では、規模や集客条件が異なります。全国平均だけを見ると、売上の大きな店の動きが強く表れ、別の地域で店が減ったことは見えにくくなります。
買い物をする側にとって大切なのは、全国売上よりも「自分が利用できる範囲に店があるか」です。ある都市の売上が伸びても、別の地域で失われた売り場や対面サービスが戻るわけではありません。
百貨店の縮小から分かるのは、買い物の一部が変わったこと
百貨店の売上減だけで、家計全体の買い物が同じ割合で減ったとは判断できません。
百貨店以外にも、スーパー、専門店、ショッピングセンター、インターネット通販があります。今回の統計は、それらの販売額や、同じ人が購入先を変えたかどうかを追跡していません。
したがって、次の二つは分ける必要があります。
- 確認できる事実: 百貨店統計の店舗数と販売総額が長期的に縮小した。
- 追加の検証が必要な説明: どの商品がどの業態へ移ったのか、価格・人口・出店戦略がそれぞれどれだけ影響したのか。
「通販が増えたから百貨店が減った」という説明だけでは、閉店の時期や地域差まで確かめられません。原因を検証するには、商品別の販売額、他業態の統計、商圏人口、店舗面積を組み合わせる必要があります。
食品を買う場所としての役割も残っている
百貨店を高額商品だけの売り場と見るのも、数字とは合いません。
2025年の年間売上では、衣料品が26.5%、食料品が25.7%を占めます。美術・宝飾・貴金属は10.4%です。食料品は約1.46兆円あり、売上の約4分の1を支えています。
この構成から、店の存続が関わるのは高額品の購入だけではないと分かります。菓子や惣菜、贈答品を買う場所としての役割もあります。ただし、売上構成比は利用者数や来店頻度の構成比ではなく、食品利用者が何割いるかまでは分かりません。
閉店後の生活への影響を考えるなら、代わりの店の有無に加え、扱う商品、対面で相談できる窓口、移動時間を確認する必要があります。今回の全国統計には、その情報は含まれていません。
最新月は売上増でも、店舗数と面積は減っている
2026年8月にも、販売額の増加と店舗網の縮小が同時に起きています。
最新の全国百貨店売上高概況では、売上高は約4,221億円、前年同月比は店舗数調整後で2.6%増です。一方、調査対象は172店で、前年同月より6店減っています。
店舗面積も前年同月比3.6%減でした。8月末の面積は約433万平方メートルです。2026年8月の店舗面積・店舗数表
1999年の311店と比べれば、最新月の172店は約44.7%少ない水準です。ただし、年末値と8月末値を比べた参考値であり、2026年末の店舗数ではありません。
売上が伸びても、買い物ができる場所や売り場の広さは減る。この組み合わせこそ、百貨店の変化を見るうえで外せない点です。8月単月の伸びをそのまま2026年通年へ延ばすこともできません。
数字を読むときは、総額・同じ店・買いやすさを分ける
百貨店の動向は、一つの増減率で評価せず、何を測りたいかに合わせて指標を選ぶ必要があります。
業界全体の規模を見るなら総額
店舗の増減を含めて、百貨店でいくら売れたかを知りたい場合は、調整前の販売総額を見ます。今回の長期比較も、この総額を使用しています。
営業を続ける店の販売動向を見るなら調整後前年比
協会の見出しに使われる前年比は、店舗数を調整した値です。たとえば2025年は調整後で1.5%減ですが、総額同士では1.7%減でした。
両者は測る対象が違います。調整後の売上が増えても、業界全体の店舗数が増えたことにはなりません。
生活の利便性を見るなら所在地と交通手段
全国店舗数だけでは、閉店した場所や、代替店までの距離は分かりません。地域への影響を調べるには、店舗の所在地と公共交通、周辺商業施設を重ねる必要があります。
また、今回の売上は物価調整をしていません。2025年の年間表では消費税を含まず、商品券は売上総額の外に別掲されています。資料を比較するときは、税込・税抜、暦年・年度、統計上の販売額・企業決算の売上高を混ぜないことが基本です。
次に見るべきは、売上が増えた地域で店舗が残るか
今後の注目点は、販売額の持ち直しが、地域の売り場の維持につながるかどうかです。
見るべき数字は、三つに絞れます。
- 店舗数と面積: 売上増と同時に減っていないか。店舗数が同じでも売り場縮小は起こり得る。
- 10都市以外の売上: 全国の増加が、都市部の販売額だけで説明されていないか。
- 所在地と代替手段: 調査対象から店が減った地域で、同じ商品やサービスを利用できる場所が残るか。
販売額が伸び、店舗や面積も維持されれば、買い物の拠点が残る方向です。販売額だけが伸び、店舗や面積が減るなら、残った売り場への集中が続いている可能性があります。
2025年の売上約5.68兆円と176店は、同じ百貨店業界を別の角度から測った数字です。売上の回復を確かめた次には、どこで店が残り、誰がそこへ行けるのかを見る必要があります。
