太陽光発電のある住宅は270万戸へ――5年間の増加と地域差を読む
太陽光発電機器のある住宅は、2018年の219万戸から2023年の270万戸へ、5年間で約51万戸、約23%増えました。ただし、人が住んでいる住宅全体に占める割合は約4.9%です。設置は広がっていますが、全国ではまだ20戸に1戸ほどにとどまります。
地域を見ると、普及の進み方にも差があります。さらに、住宅数を数える統計と、発電設備の件数を数える統計では、同じ「太陽光の普及」でも意味が異なります。
この記事で分かることは、次の3点です。
- 全国の設置住宅数は、2013年から2023年の10年間で約1.7倍になった。
- 地域比較では、戸数だけでなく住宅に占める割合と、その分母を確認する必要がある。
- 設置住宅の増加から、発電量や電気代の削減額までを直接読み取ることはできない。
使用データ――数えるのは設備のある「住宅」
この記事の設置数は、工事件数やパネル枚数ではなく、太陽光発電機器のある住宅の戸数です。
使用するのは、総務省統計局の「住宅・土地統計調査」です。全国の推移は2008年、2013年、2018年、2023年を比較し、地域差は統計局の都道府県別解説と熊本県の公表資料から確認します。
比較条件は次のとおりです。
- 対象:居住世帯のある住宅。空き家を含む総住宅数とは区別する。
- 指標:「太陽光を利用した発電機器」がある住宅数、またはその割合。
- 最新の調査時点:2023年10月1日。
- 公表主体:総務省統計局。地域の補足資料は熊本県。
2026年10月8日時点で、この調査の最新年は2023年です。5年ごとの調査なので、2026年現在の設置状況をそのまま示す数字ではありません。基本集計は2024年9月25日に公表され、設備別の住宅数は令和8年版の日本統計年鑑・第21章にも掲載されています。
元の詳細表は、e-Statの住宅・土地統計調査・表30-1で確認できます。住宅の所有関係や建築時期を分けられるため、「どの地域で多いか」から一歩進んで調べる際の入口になります。
全国の推移――5年間で約51万戸増えた
太陽光発電機器のある住宅は増え続けていますが、増加率と増加戸数では見え方が違います。
全国の推移を、万戸単位で整理すると次のようになります。割合の分母は居住世帯のある住宅です。
| 調査年 | 発電機器のある住宅数 | 住宅に占める割合 |
|---|---|---|
| 2008年 | 約52万戸 | 1.0% |
| 2013年 | 約157万戸 | 3.0% |
| 2018年 | 約219万戸 | 4.1% |
| 2023年 | 約270万戸 | 約4.9% |
出典:総務省統計局の2013年調査の解説、2018年調査の都道府県別解説、日本統計年鑑の2023年設備別住宅数。2023年の割合は、公表表の丸められた住宅数270万戸を、居住世帯のある住宅5566万5千戸で割った概算です。
増えた戸数は大きいが、増加率は落ち着いた
2013年から2018年には約62万戸、2018年から2023年には約51万戸増えました。増加率は、それぞれ約39%、約23%です。
つまり、直近の5年間も設置住宅は増えていますが、前の5年間より純増戸数は約11万戸少なくなっています。「普及が止まった」とは言えません。一方で、初期と同じ勢いで増えているわけでもありません。
2008年から2013年の増加は約105万戸でした。設置住宅が少なかった時期には、戸数の増加が割合を大きく押し上げています。2013年から2023年をまとめて見ると、住宅数は約1.7倍、割合は3.0%から約4.9%へ上昇しました。
51万戸は、新規工事の合計ではない
ここでいう51万戸は、二つの調査時点の差です。
その間には新規設置だけでなく、住宅の取り壊し、設備の撤去、居住状況の変化などもあり得ます。したがって、51万戸を5で割った約10万戸を「毎年の設置工事件数」と呼ぶことはできません。読み取れるのは、調査上の設置住宅の純増規模です。
地域差――割合の高さと設置戸数の多さを分ける
地域の普及を比べるには、住宅に占める割合と、住宅市場そのものの大きさを分けて見る必要があります。
統計局が整理した2018年の都道府県比較では、設置割合が高いのは佐賀県9.4%、長野県8.5%、宮崎県8.0%でした。一方、北海道は1.3%、東京都は1.4%です。統計局の都道府県別解説では、日照時間の長い地域や快晴日数の多い地域で普及が見られるとしています。
これは2018年の比較です。2023年の順位として読み替えることはできません。ただ、同じ調査年・同じ定義でも、地域間に大きな開きがあることは確認できます。
熊本県では20年間で1.2%から9.3%へ
より新しい地域の推移として、熊本県が2025年3月に公表した2023年調査の概要を見ると、太陽光発電機器のある住宅の割合は次のように変わっています。
- 2003年:1.2%
- 2008年:2.2%
- 2013年:5.7%
- 2018年:7.6%
- 2023年:9.3%
20年間の上昇幅は8.1ポイント、直近5年間では1.7ポイントです。全国の戸数が増えるだけでなく、地域の住宅の中で設備を持つ住宅が占める割合も上がっています。
ただし、県資料の割合と全国の概算値を厳密に比較する場合は、不詳を分母に含めるかなど、計算条件を元表でそろえる必要があります。公表資料に載る割合を、確認なしに別資料の住宅総数へ掛けて設置戸数を逆算するのは避けたいところです。
人口の多い地域が、普及率でも上位とは限らない
設置戸数の多さは、地域の住宅数に左右されます。住宅が多ければ、設置割合が低くても設備のある住宅は多くなり得ます。
反対に、住宅数の少ない県では、設置割合が高くても戸数では大都市圏を下回る場合があります。二つの指標が答える問いは違います。
- 設置住宅数:設備のある住宅が、地域にどれだけ存在するか。
- 設置割合:地域の住宅のうち、どの程度まで設備が広がったか。
- 増加幅:前の調査から、戸数や割合がどれだけ変わったか。
地域の順位を読む際には、まず何を順位付けしているのかを確認する必要があります。
普及の差を考える――日照だけでは説明しきれない
住宅の所有関係や建て方をそろえないと、地域差を住民の関心や行動の違いとして解釈してしまいます。
日照は発電を考えるうえで重要な条件です。しかし、日照条件が良くても、入居者が自分で屋根の設備を決められるとは限りません。賃貸住宅では所有者、分譲マンションでは管理組合など、設置に関わる主体が変わります。
この点を示すのが、2013年調査の所有関係別データです。太陽光発電機器のある住宅は、持ち家で148万戸、借家で9万戸。各住宅区分に占める割合は、持ち家4.6%、借家0.5%でした。統計局の設備普及の解説
この差は、賃貸入居者の環境意識が低いことを示すものではありません。設備を導入する権限や費用を負担する主体が異なるため、所有関係を分けた検証が必要だと分かります。なお、この数字は2013年の状況であり、現在の所有関係別の差をそのまま表してはいません。
地域を比べるなら、条件を一段ずつそろえる
住宅全体の設置割合に差があったら、次に持ち家だけで比較します。さらに可能なら、一戸建てだけ、同じ建築時期だけに絞ります。
条件をそろえて差が縮まれば、住宅の構成が地域差の一部を説明している可能性があります。差が残るなら、日照、設置費用、補助制度などを追加して調べる余地があります。
これは分析の手順です。住宅統計だけで、どの要因が何ポイントの差を生んだかまでは確定できません。
数字の限界――戸数は発電量や家計効果を表さない
設置住宅数の増加は普及を示しますが、設備の働きや経済効果を測るには別のデータが必要です。
「戸」「件」「kW」「kWh」は違うものを数える
同じ太陽光発電の資料でも、単位が変われば意味が変わります。
- 戸:設備のある住宅の数。
- 件:認定、導入、補助金交付など、その資料が定めた対象の数。
- kW:設備の出力規模。
- kWh:一定期間に発電・使用した電力量。
住宅・土地統計調査の戸数を、制度上の認定件数や設備容量と足し合わせることはできません。「認定された設備」と「調査時点で設備のある住宅」も別の対象です。
設置が増えても、削減額は同じにならない
住宅統計の設置戸数から、各家庭の電気代がいくら減ったかは分かりません。発電した電気を家庭で使う量、売電する量、契約単価、設備の費用などが必要です。
同じ地域の住宅でも、昼間に電気を多く使う家庭と、日中は不在の家庭では、発電した電気の使い方が異なります。設置割合が高い県に住んでいることだけで、個々の住宅の採算を判断することはできません。
標本調査と不詳にも注意する
住宅・土地統計調査は、すべての住宅を一軒ずつ数える全数調査ではありません。抽出した住宅・世帯を調べ、地域全体の住宅数などを推計しています。調査の概要
そのため、小さな地域のわずかな差を順位として強調する場合は、標本誤差にも注意が必要です。また、設備状況の不詳を含む住宅総数を分母にするか、状況が分かる住宅だけを分母にするかで、割合は変わります。
次に見るべき点――総数の増加から、住宅区分ごとの広がりへ
今後の普及を見る際は、設置住宅数が増えたかに加えて、どの住宅区分で増えたかを確認することが重要です。
例えば、持ち家だけで増える場合と、借家にも広がる場合では、設備を利用できる住民の範囲が変わります。一戸建てで増える場合と共同住宅で増える場合でも、設置を決める主体や電気の利用方法は異なります。
次の公表値では、次の3点をそろえて見たいところです。
- 全国の設置住宅数と割合が、2023年の約270万戸・約4.9%からどれだけ変わったか。
- 持ち家・借家、一戸建て・共同住宅のどこで増加したか。
- 地域差が、住宅の所有関係や建て方をそろえても残るか。
住宅の太陽光発電は、5年間で約51万戸増えました。その先を読む鍵は、総数の伸びがどの住宅に届いているかです。地域ランキングだけで判断せず、自分の住む地域の住宅構成まで確認すると、普及の数字を暮らしの条件に結び付けられます。
